政治団体の代表に
安倍氏は生前、資金管理団体「晋和会」をはじめ、件の桜を見る会後夜祭パーティを主催した「安倍晋三後援会」「東京政経研究会」「山口政経研究会」「山口晋友会」という5つの政治団体を持っていた。
政治資金収支報告書によると、このうち晋和会には約5210万円(令和3年末時点)の資金があったが、安倍氏の死後、昭恵氏が代表に就任し、政治的な財布も引き継いだ。
一方、「安倍晋三後援会」「山口政経研究会」「山口晋友会」の3団体は解散手続きがとられた。解散にあたって「山口政経研究会」は残金34万円を晋和会に寄附し、「安倍晋三後援会」は資金を使い切っていた。安倍氏の元秘書が代表を務める「東京政経研究会」(令和3年末時点の繰り越し金は1億8726万円)は現在も存続している。
もっとも、昭恵氏は安倍氏の後継者として政界に出ることを固辞し、衆院山口4区補選では後継候補として出馬した吉田真次・現代議士の応援に回った。議員でも、候補者でもない昭恵氏が政治資金を引き継ぐことにはどんな意味があるのか。政治資金研究の第一人者、岩井奉信・日本大学名誉教授が指摘する。
「政治団体は代表者が亡くなれば解散するか、会議を開いて後任の代表を決めることになっています。解散する場合、法律には残金をどう処理するかの規定がありません。他の政治団体に寄附したり、飲み食いしてゼロにして解散したり、代表者が残額を自分のものにして解散するといった形で終わります。
晋和会は昭恵さんに代表が交代した時点で、彼女の団体であり、資金も彼女の管理下に置かれますが、会社の社長交代と同様に相続税はかかりません。たとえ昭恵さんに公職の候補者になるつもりがなくても、“政治活動”という名目で晋和会のお金を使うことができるわけです」
岸・安倍家は岸信介氏と安倍氏という2人の首相をはじめ6人の代議士を輩出し、この国の政治に大きな影響力を持ってきたが、安倍家の政治的血脈は途絶え、岸家のみ衆院山口2区補選で当選した信千世氏が地盤を継いだ。
だが、昭恵氏は安倍氏から政治資金を引き継いだことで、その資金を義理の甥である信千世氏など他の政治家の政治団体に寄附することができるし、あるいは、ファーストレディ時代から続けてきた自然農法や大麻合法化にかかわる活動にあてることも可能だ。“政治家のタニマチ”的な存在になったともいえる。