賃貸マンションで生活する場合に、家賃と別に支払うことになる「管理費」。もしその費用分のサービスを提供されていないと感じた場合、管理費返還を要求することは可能なのか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
マンションの引っ越しを考えています。というのも、隣の住人が出す騒音がひどく、管理会社に通報しても対応してくれないから。他にも、常にゴミ集積場は汚く乱れ、これで毎月8500円の管理費を取っています。この場合、退室する際に、収めてきた管理費の返還を管理会社に求めることはできますか。
【回答】
管理費を家賃とは別に支払っているのですから、管理会社の対応が悪いと、その返還を求める気持ちはわかります。しかし、管理会社に請求するのは筋が違います。
管理会社と、あなたの間には何の契約もありません。従って契約関係に基づいた返還を求めることはできません。マンションの賃貸借契約は、大家であるマンション所有者との間で成立し、管理費の支払いも、その賃貸借契約の中で定められ、支払い相手も大家です。
大家は、賃貸借の目的にかなった住環境のマンションを、あなたや住民に提供する契約上の義務があり、管理会社は大家が、その義務の履行として契約に適合した住環境を維持するために管理を委託している業者です。そのため管理会社は、大家の義務を履行する補助の立場であり、履行補助者といわれる存在でしかなく、こうした債務の履行補助者に不手際があって、債務が履行されなかったとすれば、それは債務者の債務不履行責任の問題となり、履行補助者自身は債権者に対して独立した契約上の責任を負うことはありません。