業績良好、財務健全にもかかわらず、株価が割安な大企業の「低PBR銘柄」が関係者の注目を集めている。東証プライム市場の約4割を占めるとされる「お宝株」は今が仕込み時なのか──専門家に聞いた。
東証の強い危機感
「プライム市場、スタンダード市場に上場する企業は資本コストや株価を意識した経営を推進せよ」──3月末、東京証券取引所はPBR(株価純資産倍率)が1倍を下回る上場企業などに向けて、株価水準を引き上げるための具体策を開示・実行するよう要請した。取引所が企業に要請する内容としては異例で、国内外の投資家が注目している。
マーケットバンク代表の岡山憲史氏が解説する。
「PBRは株価を1株あたり純資産(資産から負債を差し引いたもの)で割って算出され、株式価値が純資産に対してどの程度の水準にあるかを示す指標です。PBRが1倍を下回る場合、市場から見た企業の成長性などの評価が低いことを意味する。企業にとっては資金調達が難しくなるなど、さらに企業価値が低下する問題が発生する可能性があります」
東証が上場企業に株価水準の改善要請を行なった背景には、欧米の取引所と比べてPBR1倍割れの企業の比率が高いことへの強い危機感があるという。マーケット・アナリストの平野憲一氏(ケイ・アセット代表)が指摘する。
「東証による市場再編から1年が経ちますが、日本株は欧米に比べて稼ぐ力が見劣りしたままです。日本の代表的企業で構成されるTOPIX(東証株価指数)500ではPBR1倍割れ銘柄が40%超に達するのに対し、米国のS&P500の採用銘柄ではわずか5%程度。トヨタ自動車や三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)といった日本を代表する優良企業でも1倍割れしています。
このままでは投資家から『日本企業は株価を引き上げる意識が乏しく魅力がない』とみなされ、国際競争に取り残されてしまうと東証は危惧しているようです」