一連のサミット外交が一区切りしたいま、政治の重要課題は内政に移る。岸田文雄・首相は手始めに6月に発表する「骨太の方針」(経済財政の基本方針)に異次元の少子化対策の詳細と財源を盛り込むとしているが、そこで財源負担を高齢者にツケ回ししようと考えていることがわかってきた。
骨太の方針には、財務相の諮問機関「財政制度等審議会」の提言が反映される。5月11日に開かれた財政審の財政制度分科会では、早速、少子化対策の具体的な財源が議論された。そこで浮上しているのが、高齢者の医療費や介護保険の負担増だが、コトは社会保険料の値上げだけにはとどまらない。【前後編の後編。前編から読む】
その先に待ち受けているのは消費税の増税だ。
少子化対策の財源について、自民党の茂木敏充・幹事長は「増税や国債はいま、考えていない。社会全体で支えていくためには、さまざまな保険料の拠出は検討しなければならない」と増税を否定したが、保険料値上げだけではとても足りない。
政府の方針では、消費税は年金・医療・介護と少子化対策を合わせた社会保障4経費の財源にあてると決められており、財務相の諮問機関「財政制度等審議会」に提出された財務省資料でも、これまでの子ども関連予算の増加分の約5割は消費税率引き上げで賄われてきたと説明している。
巨額の少子化対策の財源には、消費税引き上げが欠かせないのだ。
財界からはすでに増税論が高まっている。今年4月に財政制度等審議会会長に就任した十倉雅和・経団連会長は少子化対策財源について「消費税も当然議論の対象になる」(日本経済新聞インタビュー)と明言し、経団連は4月26日に発表した報告書で今後の社会保障財源について政府にこう提言した。
〈社会保険料だけでなく、消費税を含めた様々な税財源の組み合わせによる新たな負担も選択肢とすべきである〉(分厚い中間層の形成に向けた検討会議報告)