鉄道は、多くの人にとって交通の手段としてだけでなく、趣味や娯楽の対象としても親しまれており、ときに人々の知的好奇心を刺激してくれる。日常使っている電車の車体は、平らの様に見えて、実は上に反った形状をしているという。交通技術ライターの川辺謙一氏による連載「鉄道の科学」。第11回は「電車の車体と車両限界」について。
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電車は、「車体」と呼ばれる箱状の構造物と、「台車」と呼ばれる車輪がついた走行装置によって構成されています。台車は線路の上を走りながら、車体を下から支える役割を果たしています。
ここで述べた車体は、じつは上に向かって反っています。進行方向に向かってまっすぐな箱状であり、車内の床は真っ平らであるかのように見えますが、厳密には中央部分だけ少し高くなったアーチ形になっているのです。
なぜ電車の車体は、上に向かって反っているのでしょうか? 今回は、その謎に迫ってみましょう。
鍵となる「車両限界」とは
まずは結論から言います。車体が反っているのは、人が乗ったときに、その重量によって電車全体の断面が「車両限界」の外側に出るのを防ぐためです。
……と言っても、ピンと来る人は少ないでしょう。そこで、まずは鉄道の専門用語である車両限界について説明します。