川辺謙一 鉄道の科学

電車の車体が「上に向かって反っている」のはなぜ? 安全に走行するための知られざる工夫

 車両限界とは、鉄道における規格(寸法などについて定めた標準)の一つで、電車などの鉄道車両の断面が外側に越えてはならない限界範囲を指します。このため、鉄道車両は、すべての部品が車両限界の内側に収まるように設計されています。

 なお、線路にある構造物には「建築限界」と呼ばれる限界範囲があり、橋やトンネルなどは、断面がこの内側に入らないように設計されています。

 つまり、車両限界と建築限界は、車両が線路の構造物と接触せずに安全に走るために定められた、断面に関する決まりなのです。

 車両限界と建築限界は、鉄道会社や路線などによって異なることがあります。たとえばJRグループの場合は、新幹線と在来線で車両限界が大きく異なります。

JRグループの車両限界と建築限界。車両の断面は車両限界の内側に収める必要がある

JRグループの車両限界と建築限界。車両の断面は車両限界の内側に収める必要がある

 さて、ここで車体の話に戻りましょう。車体は人が乗ると、その重量によって下方に変形します。現在車体は、「構体」と呼ばれる基礎部分が普通鋼やステンレス鋼、アルミニウム合金といった金属材料で造られているので、固く、変形しないように思えますが、じつは車内に乗った人の重量によって変形し、台車に支えられた部分を除いて位置が下がるのです。

 もし電車の車体がまっすぐで、床も平らだったとすると、車内に大勢の人が乗ったときに車体全体が下に向かって反ってしまいます。車体は、前後にある台車の上に載っているので、中央部分の位置が下がってしまうのです。

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