川辺謙一 鉄道の科学

電車の車体が「上に向かって反っている」のはなぜ? 安全に走行するための知られざる工夫

 車体が下に反りすぎると、電車全体の断面が車両限界を越えてしまいます。車体の床下に固定されている機器(床下機器)の位置が下がり、その一部が車両限界の外側に飛び出してしまうのです。

 これを避けるため、車体は、あらかじめ上に反らせた構造にしてあります。つまり、車内に多くの人が乗ったときに、車体がまっすぐに近い形になるようにすることで、床下機器が車両限界を越えるのを防いでいるのです。

電車の車体を上に反らすことで、人の重量で変形しても電車の断面が車両限界を超えないようにしてある

電車の車体を上に反らすことで、人の重量で変形しても電車の断面が車両限界を超えないようにしてある

 このような車体の反りは「キャンバ」と呼ばれます。平屋(一階建て)構造の車体の場合は、中央部分の床面が、前後の端の床面よりも5mm程度高くなっています。なお、二階建て構造の車体は、平屋構造の車体よりも変形しにくいので、この値がさらに小さくなっています。

【プロフィール】
川辺謙一(かわべ・けんいち)/交通技術ライター。1970年生まれ。東北大学工学部卒、東北大学大学院工学研究科修了。化学メーカーの工場・研究所勤務をへて独立。技術系出身の経歴と、絵や図を描く技能を生かし、高度化した技術を一般向けにわかりやすく翻訳・解説。著書多数。

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