車体が下に反りすぎると、電車全体の断面が車両限界を越えてしまいます。車体の床下に固定されている機器(床下機器)の位置が下がり、その一部が車両限界の外側に飛び出してしまうのです。
これを避けるため、車体は、あらかじめ上に反らせた構造にしてあります。つまり、車内に多くの人が乗ったときに、車体がまっすぐに近い形になるようにすることで、床下機器が車両限界を越えるのを防いでいるのです。
このような車体の反りは「キャンバ」と呼ばれます。平屋(一階建て)構造の車体の場合は、中央部分の床面が、前後の端の床面よりも5mm程度高くなっています。なお、二階建て構造の車体は、平屋構造の車体よりも変形しにくいので、この値がさらに小さくなっています。
【プロフィール】
川辺謙一(かわべ・けんいち)/交通技術ライター。1970年生まれ。東北大学工学部卒、東北大学大学院工学研究科修了。化学メーカーの工場・研究所勤務をへて独立。技術系出身の経歴と、絵や図を描く技能を生かし、高度化した技術を一般向けにわかりやすく翻訳・解説。著書多数。