平均給料が上がっても可処分所得だけが減る理由は、直接税と社会保障費負担の増額である。この25年間に、20代の若者はこうした天引きされる負担が、1996年の約63万円から約102万円へ1.6倍増にもなっている。ただでさえ少ない給料の上に、なぜか20代の若者たちが苦しめられ続けてきたという事実がある。
この間、就職氷河期、リーマンショック、今回のコロナ禍という大きな経済的環境の悪化という荒波を受けている。この90年代から今に至る長い「若者いじめ」が、現在の婚姻数減少と無関係とはいえない。この期間に、可処分所得が上がらなかった世代とは現在の45歳以上の生涯未婚率対象年齢となりつつあるのだから。
晩婚化など起きていない。起きているのは、若者が若者のうちにお金の不安により結婚できなかったことによる、結果的非婚があるだけなのである。
【プロフィール】
荒川和久(あらかわ・かずひさ)/広告会社にて自動車・飲料・ビール・食品など幅広い業種の企業業務を担当したのち独立。ソロ社会やソロ文化、独身男女の行動や消費を研究する「独身研究家」として、国内外のテレビ・ラジオ・新聞など各種メディアに多数出演。著書に『超ソロ社会』(PHP新書)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)などがある。
※荒川和久『「居場所がない」人たち 超ソロ社会における幸福のコミュニティ論』より一部抜粋・再構成