統計開始以来、初の「80万人割れ」──2月末に厚労省が発表した2022年の人口動態統計(速報値)で年間の出生数が過去最少(79万9728人)になったことが報じられ、大きな話題となっている。急激な出生数の減少が、将来の経済・社会基盤を支える担い手不足に拍車をかけるなどの理由から、「国家存亡の危機」と指摘する声もある。岸田文雄・首相は「異次元の少子化対策」を掲げて対策を講じようとするが、当事者である出産・育児の適齢期にある人々は、今、どんなことに悩んでいるのか。フリーライターの吉田みく氏が現役子育て世代の女性たちに話を聞いた。
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新型コロナウイルス感染拡大の影響と推測される婚姻数の減少、結婚したとしても経済的に余裕がないなど、さまざまな理由から出生数は急減している。子供を作りたくても躊躇してしまう事情を抱えている人は多い。
夫も親も仕事で育児を頼れない
なかには夫との“育児観”のすれ違いに直面するケースもあるようだ。都内在住の会社員・アキさん(仮名、29歳)は、夫婦間で育児に対する考えがまとまっていないことが理由で、子供を持つことを前向きに考えられないという。
「会社経営者の夫は激務であることに加え、両親は都内に住んではいますが仕事をしているので、出産後の育児で頼ることが厳しい状況です。子供ができたらワンオペ育児は確定だし、今まで築いてきたキャリアは一度ストップ……。夫は『考えすぎても仕方がないよ、まずはチャレンジしてみよう!』とポジティブなことを言っているのですが、無責任な発言にしか聞こえなくてうんざりしてしまいます」(アキさん)
アキさんの夫は子供を作ることに非常に前向き。だからこそ、意見の衝突が頻繁に起きてしまうという。両親に相談したこともあったそうだが、「できるだけ協力はしたいけど、私たちも仕事をしているからねぇ……」と言われてしまったそうだ。
「子育てに際しては、十分なお金があるかどうかだけでなく、時間の余裕や人手の多さがあるかどうかという点も大切だと感じました。夫婦共働きや、親が定年後も働くことが当たり前になってきている世の中では、育児で周囲の手を借りることすら難しいのではないでしょうか」(同前)
現在、アキさんは勤務先で育児をしながらでも働ける環境にできるよう、会社の上司と話し合いを重ねながら仕事をしているそうだ。「私自身が『大丈夫』と思える子育ての環境が整ったら、前向きに子供のことを考えたいです」と話していた。