大前研一「ビジネス新大陸」の歩き方

ウクライナ反転攻勢でもロシアは全面撤退しない ゼレンスキー大統領が目指すべき“戦争終結の落とし所”

ゼレンスキー大統領に求められるのは「停戦・和平」への道の模索か(EPA=時事)

ゼレンスキー大統領に求められるのは「停戦・和平」への道の模索か(EPA=時事)

 終結の兆しがいまだ見えないウクライナ戦争。ロシア国内からは「ウクライナとの戦争で、ロシア経済は疲弊している」という声も聞こえてくるという。ウクライナも反転攻勢に出ようとする中、経営コンサルタントの大前研一氏は「ゼレンスキー大統領から停戦・和平への道を模索した方が良い」と提言する。その真意ついて、大前氏が解説する。

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 ウクライナ戦争の出口は全く見えない。米欧から兵器の供給を受けたウクライナが近く大規模な反転攻勢に出るとされ(本稿執筆時点)、今後はウクライナ側が優勢になる可能性がある。実際、ゼレンスキー大統領は「今年、侵略者の敗北を不可逆的なものにできる」と意気軒昂だが、たとえウクライナの反撃が奏功したとしても、ロシアを全面撤退に追い込むことはできないと思う。

 なぜなら、親ロシア派が支配する東部のドネツク州とルガンスク州をウクライナが完全に制圧することは難しいだろうし、南部のヘルソン州とザポリージャ州も、仮に全域を取り返したとしても、両州を流れるドニプロ川は幅が最大16kmもあるので、防御を維持するのは至難の業だと思うからだ。クリミア半島もロシア系の住民が7割を占めるので、再びウクライナが支配することはできないだろう。

 そのように考えると、ウクライナは今こそ「停戦」に持ち込むべく、東部2州の親ロシア派支配地域に「特別な地位」を与える2014年の「ミンスク合意【※】」に戻るべきだと思う。

【※ミンスク合意/2014年に勃発したウクライナ東部紛争を巡る和平合意。その内容は「包括的な停戦」「東部の親ロシア派支配地域に“特別な地位(高度で幅広い自治)”を与える恒久法の採択」、「ウクライナからの外国部隊の撤退」「ウクライナ政府による国境管理の回復」など】

 つまり、東部についてはウクライナからの独立を一方的に宣言した「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」に高度な自治を認め、クリミア半島および南部2州のドニプロ川以南の奪還も諦めて停戦を目指すべきだと思うのだ。

 南部はドニプロ川を朝鮮半島の「38度線」のような停戦ラインにして、そこから南北2kmずつを非武装地帯にするという方法が、戦争終結の落としどころではないかと思う。

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