一方、週末にかけては日銀金融政策決定会合が開催される。大方の予想は現状維持ではあるが、イールドカーブコントロール(YCC)の修正もしくは撤廃など早期修正への思惑も一部では根強く、積極的に上値を追うほどの展開は期待しにくい。ただ、週末金曜の昼頃に発表される結果で現状維持が確認されれば、植田総裁の会見前に株高に勢いがつく場面がありそうだ。
他方、米CPIの鈍化やFRBのターミナルレート明確化により米金利の先高観が薄れれば、ドル円は軟化が予想され、この点は日本株の上値抑制要因となろう。また、米S&P500種株価指数は8日、昨年10月に付けた安値からの上昇率が20%を超え、強気相場入りと見られている。強気相場入りとなった後も米株式市場が堅調な展開を続ければ、米株への一部資金回帰も想定され、日本株への資金一極集中は後退しよう。可能性は低いが、日銀がYCCの修正・撤廃に踏み切れば、円高進行により日本株の利益確定売りが加速する可能性もある。
需給面では、東京証券取引所によると、6月2日時点の裁定残高がネットベースで1兆1828.55億円の買い越しとなり、前週(1兆838.94億円の買い越し)からさらに増加した。2021年以降のレンジ上限近くまで増加してきているため、引き続き裁定売り(現物売り・先物買い)の圧力が上値を抑制しやすい状況には留意しておきたい。また、JPXの投資部門別売買動向では、外国人投資家は5月第5週、日経225先物では2304億円の売り越しと、8週ぶりに売り越しに転じた。短期筋はすでに買い持ち高が膨れ上がっている状況といえ、今週半ばの急落からも分かるように、短期筋の売り向かう動きには注意したい。
ほか、中央銀行イベント以外で留意したいのは米中の経済指標だ。15日には中国で5月の鉱工業生産、小売売上高、固定資産投資、米国でも5月鉱工業生産、小売売上高、6月のニューヨーク連銀製造業景気指数、フィラデルフィア連銀景況指数などが発表される。中国では製造業を中心に経済指標の減速が月を追うごとに鮮明になっており、米国でも先週あたりから景況指標の悪化が目立ってきている。堅調とされてきた個人消費も、米5月ISM非製造業景気指数の予想外の低下で黄色信号が灯っている。米中の経済指標の結果次第では、中央銀行イベントを無難に消化しても、景気後退懸念が強まる形で予想外のリスクオフになる形も考えられる。
今週は、12日に5月企業物価指数、5月工作機械受注、13日に4-6月期法人企業景気予測調査、米FOMC(-14日)、米5月CPI、14日に米5月卸売物価指数(PPI)、パウエルFRB議長の会見、15日に日銀金融政策決定会合(-16日)、5月貿易収支、4月機械受注、中国5月鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資、欧州中央銀行(ECB)定例理事会、米5月小売売上高・鉱工業生産、米6月ニューヨーク連銀製造業景気指数、米6月フィラデルフィア連銀景況指数、16日に植田日銀総裁の会見、米6月ミシガン大学消費者信頼感指数、などが予定されている。