“ハイリターン”が狙える投資には暴落リスクと隣り合わせのものや、専門的な知識が不可欠な商品が少なくない。素人が手を出すと痛い目に遭うと、専門家は警告する。
資産運用の手段として身近で有用なはずの「株式投資」も、やり方次第では大きなリスクを負うことになる。ファイナンシャルプランナー(FP)・深野康彦氏が言う。
「そのひとつが個別株式1銘柄への集中投資です。東証上場の約3860社でも、大きく値上がりするものを見極めるのはプロでも至難の業。だからこそ、複数の銘柄や異なる金融商品に分散投資をしているのです」
経済アナリストの森永卓郎氏もこう言う。
「個別株を買う際に1銘柄だけに集中投資すると、当然ながら、1企業の株価変動リスクをまとめて受けることになります。業績不調だけでなく、不祥事で株価が暴落したり、倒産により株が紙屑になって資産をすべて失う可能性もあるのです」
投資の初心者だった60代男性が言う。
「投資経験が豊富な友人に、『分散投資の投信の儲けなど、たかが知れている。1銘柄に絞って投資すれば、少ない資金でも一攫千金の可能性がある』と言われ、その気になってしまいました」
その後、男性は証券マンから「新薬の開発が最終段階」と報じられ株価が上昇し始めていた製薬ベンチャー株を勧められ、購入したという。
「新薬開発に成功すれば株価はさらに急上昇すると期待し、株価1万円の時に100株、100万円を投資しました。しかし、その直後に新薬の開発中止が発表され同社の株価は急降下。4000円まで下落した時点で売却しましたが、たった2週間で60万円も損してしまいました」(同前)
FPで消費生活アドバイザーの丸山晴美氏はこう指摘する。
「1銘柄への集中投資は、“丁半博打”となんら変わりません。株価が10%下がったら損切りするなどのリスク管理ができる人以外は、やるべきではないでしょう」
※週刊ポスト2023年3月31日号