6月13日、政府は児童手当や育児休業給付の拡充などを盛り込んだ「こども未来戦略方針」を閣議決定した。それを受けて岸田文雄首相は記者会見を開き、児童手当の所得制限を撤廃すること、支給対象を高校生まで広げること、第3子以降は月額3万円に増額することなどを表明して胸を張ったが、その言葉を鵜呑みにしていいのかは不透明な部分が多い。
児童手当に関しては、現行制度においては0~3歳未満が月額1万5000円、3歳~小学校修了前は月額1万円(第3子以降は月額1万5000円)、中学生が月額1万円という水準になっている(所得制限あり)。
岸田首相はそれを拡充し、所得制限は撤廃したうえで、高校生にも月額1万円を支給し、さらに第3子以降については年齢にかかわらず月額3万円に増やすことを表明した。会見では、来年10月から実施することも明らかにしている。しかし、ベテラン社会保険労務士はこう話す。
「会見の前から指摘されてきたことですが、岸田首相は少子化対策の財源について年末まで議論を先送りした。会見で岸田首相はわざわざ、『先送りとの指摘は適切ではない』『年末の予算編成を通じて具体化していく』と言及していたが、言い訳にしか聞こえません。
児童手当を拡充するために16~18歳の子供がいる世帯の扶養控除を廃止する議論があるとも報じられており、そうなったら手当が増えても税金が増えて家計がマイナスになるケースも想定される。岸田首相は『実質的に追加負担を生じさせないことを目指すとの方針は揺るぎない』と語気を強めていたが、具体的にどうするのかは伝わってこなかった」
それだけではない。岸田首相は会見のなかでこうも強調していた。
〈3人のお子さんがいるご家庭では、お子さんたちが高校を卒業するまでの児童手当の総額は、最大で約400万円増の1100万円となります〉
非常に魅力的に聞こえるフレーズだが、本当にそうなるのかは疑問がある。まずは岸田首相が挙げた数字を点検してみよう。