少子高齢化の進行に伴い、空き家問題が深刻化している。「都会に住んでいるから大丈夫」と思っていても、相続した実家を空き家のまま放置し、思わぬトラブルに巻き込まれることもあるという。エージェント型の不動産仲介を手掛ける、らくだ不動産の山本直彌氏が、「空き屋トラブル」の実例を紹介しながら、その対策について解説する。
「いざとなればいつでも売れる」が危ない
以下は、ある地方都市で実際にあったケースです。
男性・Aさんは、親が亡くなり、実家を相続したものの、しばらく空き家として放置していました。一応は都市部で、山奥とか、いわゆる限界集落というわけではありません。そうしたことから、いざとなればいつでも売れるという意識があり、つい空き家の状態で放置してしまいました。
地方だと固定資産税が安い場合もあります。慌てて安く売ってしまうよりは、年間数万円くらいの税金を払っても、しばらく様子を見ようと思っていたそうです。
もちろん空き家を放置していると、雑草が生い茂ったり、木造家屋が腐ったりするリスクがあることは理解していました。ただ、「たまに帰省して手入れしなければ」とは思うものの、仕事も忙しいので、なかなか機会を作れなかった。そうしているうちに、気がつくと年単位の時間が経過していました。
「不審者が住み着いている」
ある日、Aさんの自宅の郵便受けに、見慣れない差出人からの手紙が届いていました。「至急」と書かれていて、不安になって開けて見ると、実家の近隣住民からの抗議文でした。その中に、「あなたの実家が廃墟と化し、不審者が住み着いている」という、驚くべき指摘があったのです。
「そのせいで近隣の不動産の価値が下がっている」とも書かれており、対応しなければ法的措置を取るとほのめかしてありました。
Aさんが慌てて帰省してみると、長年にわたって空き家となっていた実家は確かに荒れていて、雑草が生い茂り、廃墟と化していました。そこに、地域の不良少年らが侵入して、なかばアジトのようになっていたのです。
近隣のあいだでも問題視されていたようですが、現在の所有者が誰なのかわからず、長年、問題が先送りされていました。そうした中で、近隣にある自分の不動産を売却しようとした方がいて、「近くに廃墟があり、不審者がたむろしている」ことを理由に、売却を断られるという“事件”がありました。そこで、一念発起して廃墟の登記簿を取って所有者を確認し、手紙で連絡してきた、という経緯だったそうです。
結局、Aさんは、警察や不動産業者にも相談したうえで、対応に当たることになりました。そこには追加の出費も発生しています。