維新がなだれを起こす
岩田:戦国時代のようですね。先ほど橋下さんがおっしゃったように、維新が躍進するには無党派層をつかむ必要があると。これまで日本の政治で無党派層が大きく動いたのは、社会党が躍進して与野党逆転し、土井たか子さんが「山が動いた」という名言を残した1989年の参院選や、2005年の小泉(純一郎)さんの郵政解散、2009年の民主党の政権交代など何度かあります。
橋下:小泉さんの郵政解散は、首相が自らの決断で積極的に無党派層をつかみにいって、なだれを起こさせたという意味では、本当に凄いと思う。
岩田:私はあのとき記者会見場にいたのですが、小泉首相は、ガリレオ・ガリレイの地動説を持ち出して、「それでも郵政民営化は正しい」と訴えました。その迫力を見たとき、「この瞬間に流れができた」と思いました。
橋下:あれが“政治”なんですよね。政治って、「世論にのる政治」と「世論を動かす政治」があり、両方必要で、岸田さんは「のる」ほうなんですが、より重要なのは「動かす」ほうなんですよ。
岩田:野党からすれば、ひっくり返さないといけないわけですからね。
橋下:耳当たりのいいメッセージでは世論は動きません。手前味噌になりますが、大阪都構想というのは賛否両論巻き起こしたわけですよね。なだれを起こすには、反対する人のエネルギーも必要なんです。反対する人の熱が高まると、賛成する人がもっと熱を出して、大きな波が起きる。
岩田:安倍さんも絶えず批判にさらされていましたね。平和安全法制が成立した2015年には官邸前で激しいデモが起きました。批判する人がいるから、支持する人も熱を帯びる。そういうものですね。ところで岸田首相のアンチは、あまり見かけない気がするのですが。
橋下:岸田さんも何にもやっていないわけではなくて、防衛費の増額とか、効果があるかわからないけど少子化対策とか、日韓関係の改善にも取り組んでいて、積極的に支持している人もいると思います。今の岸田政権が総崩れになるというのは想像しにくい。