内部留保が多い割に株価が安い
一敗地に塗れた内山氏は意を決し反攻に転じた。
「オアシスが株を買い集めるのは正当な投資行為ですが、言われなき誹謗中傷は絶対に許せず、彼らが主張する38項目について15億4000万円の損害賠償を求める裁判を起こしました。会長を解任された取締役会決議の無効も訴えていきます」
内山氏はフジテックが狙われた理由をこう語った。
「好調な業績で内部留保も多い割に株価が安く、お買い得でした。もっと思い切った成長戦略を描いて高配当を実現し、株価を上げておくべきだった。創業家社長として悠長に構えていたのが災いしたかもしれません」
創業家として憂慮するのは愛するフジテックが切り売りされることだ。
「オアシスはフジテックの経営に興味はありません。特定の企業をターゲットに、内部留保を吐き出させて資産を切り売りし、短期間で売り抜けて高率の利益を出すことが彼らの常套手段。父親から引き継ぎ、私が売り上げを倍に、利益を3倍にした、思い入れのあるフジテックが彼らの言いなりになるのは耐えられません」
果たして内山氏の言う通り、経営支配権を獲得した末にオアシスはフジテックを短期間で売り抜けるつもりなのか。
オアシスに聞いたが締め切りまでに回答はなく、フジテック広報室はこう回答した。
「特定の株主が当社の経営支配権を取得したと仮定した場合の当社の資本政策や同株主の投資行動について、当社はお答えできる立場にございません。当社はさらなる企業価値の向上のため、現行の事業戦略及び財務戦略の見直しを進める考えであり、このような企業価値の向上を通じて、株主をはじめとするステークホルダーの皆様の期待に応える所存であります」
6月21日に迫る株主総会では、内山氏はフジテック株を約10%持つ自身の会社「ウチヤマ・インターナショナル」を通じ、8人の新たな社外取締役の選任を株主提案。オアシスの息がかかる会社側は新社長を含む取締役9人の選任を提案しており、「勝者総取り」の大勝負が見込まれる。
地方の老舗企業であっても、いつ海外投資家から狙われるか分からない時代を迎えたということだ。
※週刊ポスト2023年6月30日・7月7日号