「相続の大激変」が続いている。なかでも注目したいのが、これまで相続税対策の王道とされてきた「暦年贈与」の大改正だ。
相続税額は亡くなった人の遺産総額などによって変わるが、計算にあたっては基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人の数)がある。妻1人、子1人が相続人の場合、遺産が4200万円までなら相続税はゼロ。一方、生前に親から子らへ「暦年贈与」する場合、年110万円までの非課税枠(基礎控除)がある。そのため生前に年110万円ずつ非課税で贈与し、将来の遺産総額を圧縮して基礎控除の範囲内に近づけていく節税術が普及している。
新ルールではこれがどう変わるのか。その内容や影響、正しい対策まで、専門家が疑問に答えていく──。
Q.新ルールの内容は?
来年1月から変更になるのは、暦年贈与の相続財産への加算期間(持ち戻し期間)だ。相続・贈与に詳しい税理士の山本宏氏が言う。
「現行制度では被相続人が亡くなる『3年前』までの贈与を相続財産に持ち戻す仕組みになっていますが、これが税制改正で『7年前』の贈与分まで相続財産に加算される仕組みに変わります」
つまり、非課税で贈与できたものが相続税の課税対象になる課税強化だ。
Q.どのくらいの負担増になる?
親の遺産1億円を子供1人が相続し、亡くなる前の10年以上、毎年110万円の贈与を受けていたケースで考えてみる。
「現行制度の持ち戻し期間3年の場合、課税遺産総額は1億円に3年分の生前贈与(330万円)をプラスし、基礎控除(3600万円)を引いた6730万円となり、相続税は1319万円。これが7年に延長されると、プラスされる生前贈与が7年分(770万円から緩和措置の控除100万円を引いた額)になり、課税遺産総額は7070万円。相続税は1421万円で、102万円の負担増です」(山本氏)
Q.どんな対策がある?
贈与分からの持ち戻し期間が設けられる対象は「相続人」に限られる。そのため、「贈与する相手を相続人ではない家族、たとえば『孫』にすることで持ち戻し期間延長の影響は受けずに贈与ができる」(山本氏)という。