車輪と車軸が一体になっている
まずは結論から言います。電車がカーブを曲がることができる秘密は、車輪の構造にあります。つまり、左右のレールの長さの差に対応できるように、車輪が特殊な形になっているのです。
それでは本題に入る前に、電車の車輪と車軸の関係について説明しておきましょう。
電車では、左右2枚の車輪と1本の車軸がセットになって固定されているので、左右の車輪は常に同じ回転速度で回ります。つまり、左右の車輪が同じ車軸でつながっていない自動車とは、車輪が転がるしくみが根本的にちがうのです。
なお、このように左右の車輪と車軸がセットになったものを鉄道の専門用語では「輪軸(りんじく)」と言います。「輪軸」は、車体を支える台車の重要な部品の一つです。
このため電車には、デファレンシャルギア(差動装置)がありません。デファレンシャルギアとは、左右の車輪の回転速度の差を吸収して動力を伝える動力伝達装置であり、自動車には不可欠な存在です(インホイールモーターで各車輪を個別に駆動させる電気自動車を除く)。ところが電車では、左右の車輪が同じ車軸でつながっており、モーター(主電動機)で車軸に動力を伝えれば、左右の車輪を同じ回転速度で回すことができるので、デファレンシャルギアがいらないのです。
円錐の一部を切り取った形
さあ、ここからが本題です。先ほども述べたように、電車の車輪は特殊な形になっており、左右のレールの長さの差を吸収できる構造になっています。
電車の車輪には、フランジと踏面(とうめん)と呼ばれる部分があります。フランジは、脱線を防ぐための凸部(つば)であり、踏面はレールと接触する面です。
この踏面は、円錐の一部を切り取った形になっており、外側に向かうほどレールと接する部分での半径が小さくなっています。厳密に言うと、円弧の一部を切り取った形を採用した例もありますが、ここでは円錐形になった円錐踏面について説明します。
輪軸は、曲線区間ではレールに沿って曲がり、直線区間では片側のレールに偏ることなく転がることができます。つまり、輪軸には、レールに沿って自ら舵を切り、転がるという機能があるのです。鉄道では、これを「自己操舵(じこそうだ)機能」と呼びます。
自己操舵機能について、もう少しくわしく説明しましょう。