いまのところ、マイナンバーカード(マイナカード)利用のメリットよりも、続発するトラブルへの不安感を抱いている人が大多数のようだ。誤登録は他人事ではなく、いつ自分が情報流出の“被害者”になるかわからない──。
「今度は利便性を高めるところで、いろいろデジタル庁としても支援していきたい」。河野太郎デジタル大臣は6月17日、視察に訪れた長野県松本市でそう高らかに宣言した。
だが、マイナカードのトラブルが止まらないことを河野氏はどう考えているのか。わずか1週間前の国会で、本人以外の家族名義の口座が登録されているミスが全国で13万件にのぼった原因について問われ、河野氏はこう答弁した。
「当然責任は大臣たる私にあるので、何らかの形で私に対する処分をやらなければいけないだろうと思う」
その舌の根も乾かないうちに、一足飛びに「利便性のアピール」では、マイナカードへの国民の信頼失墜はまだまだ続くだろう。
マイナカードにはさまざまな分野の個人情報がひもづけられ、それぞれでトラブルが発生している。
他人の年金記録が閲覧できる状態になったケースもあれば、マイナポイントが誤って第三者に付与されていたり、本人名義のものしか認められない公金受取口座が家族名義のものになっていたり、カードの顔写真が男女で取り違えられた例まであり、続々と発覚する失態は底なし沼のようだ。
6月20日には、同姓同名の他人のマイナカードを誤交付された人が、マイナポイントを申請する事例が発覚。ほかにも、マイナンバーと障害者手帳のひもづけを誤ったトラブルも判明した。経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説する。
「いま起きているトラブルの原因のほとんどは、市区町村などの作業者の人為的ミスです。マイナンバーを誤って登録したとか、システムからのログアウトを忘れて別人の情報を上書き登録したとか。そうしたミスの背景には、政府がマイナカードの普及を急ぎすぎたことがあります」