「嫌ならやめたらいい」が通用しない
6月2日、2024年秋に現行の健康保険証が廃止され、マイナカードと連携した「マイナ保険証」に一本化する法律が成立した。これに対応するため、関係機関は膨大な作業を余儀なくされている。
5月19日、兵庫県職員とその家族に健康保険証を発行する「地方職員共済組合兵庫県支部」が、ある組合員の家族の氏名や住所、受診医療機関や処方薬、医療費などが情報漏洩していたことを発表した。行政手続きをオンラインで行える「マイナポータル」上で、第三者に閲覧された可能性があるという。
同支部では、約6000人分のマイナンバーのひもづけを、わずか5人の職員が地道に手入力していたというのだから、ミスが起きるのは必然だった。
「デジタル庁や厚労省は“マイナ保険証を使えば、診療記録などをその場で引き出すことができ、データに基づいたよりよい医療を受けられるようになる”と主張しています。もし他人の保険証が登録されていて、それを前提に診断、処方を受けたら、逆に健康を損なう可能性もあるでしょう」(荻原さん・以下同)
医療機関にとっても、マイナ保険証の導入は混乱のもと。特に、高齢の開業医などの中には不安を覚える人も多いようだ。デジタル対応ができず紙ベースで運営している小規模なクリニックでは、「これを機に廃業する」という声も聞こえてくる。
つまり、長年診てもらっていた「かかりつけ医」を失う人も多く出るため、一時的にでも、“低質な医療”を受けなければならない人も出てきそうだ。
タチが悪いのは、「嫌ならやめたらいい」が、マイナ保険証には通用しないことだ。昨年8月、滋賀県の50才の女性が、希望していないのにマイナカードと健康保険証がひもづけられていたことに気がついた。女性は保険証情報の削除を求めたが、国は「削除手順を整備していない」として、その要望に対応しなかった。
自分の個人情報は自分で守らなければならない。「自分のマイナンバーが、正しく個人情報とひもづいているか」は、危険を避ける上で重要なポイントだ。トラブルの内容と、確認法や解決法をまとめたので、役立ててほしい。