国税庁が相続税を算定するルールの見直しに動き出したことが注目を集めている。話題となっているのは、「タワマン節税」「マンション節税」などと呼ばれる相続税対策に関連するルール変更だ。日本経済新聞が6月27日付の一面トップで〈マンション節税防止へ 相続税 高層階の負担増〉と報じている。相続税対策を講じている人に留まらず、不動産市況への影響もあるのではないかと注視されている。
そもそも「現金を不動産に変えておく」という手法は、相続税対策の王道とされてきた。現預金の場合は額面がそのまま遺産としてカウントされるが、土地や建物の場合、相続税評価額は市場価格(実勢価格)の7~8割程度となることが一般的なため、現預金を不動産にしておくと、課税される遺産総額を圧縮できるという仕組みだ。その前提に加え、「マンション節税」は、立地のよい物件では上層階の実勢価格が高くなりがちで相続税評価額との乖離が大きくなることを利用する手法だった。
こうした手法が富裕層によるいきすぎた節税になっていると問題視する向きがあり、2023年度与党税制改正大綱にはマンションの相続税評価について〈市場価格との乖離の実態を踏まえ、適正化を検討する〉と明記され、年明けから国税庁の有識者会議(マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議)で議論が重ねられている。同会議の資料では、実勢価格と相続税評価額に開きがある事例として、都内で築9年43階建てマンションの23階の部屋(約67平方メートル)が実勢価格は1億1900万円だが、相続税評価額は3720万円になっているケースなどが紹介されていた。
相続税の課税対象となる遺産額が約3割に圧縮できるわけだから、たしかに節税効果は大きそうだ。見直しの動きの報道を受け、ネット上では〈また負担増か〉〈これも実質的な増税〉といった声がある一方、これまでの節税効果がいきすぎていたとして〈妥当な見直し〉と受け止める書き込みも見られた。