期限内の総点検は「まず無理でしょう」
荻原氏は「そもそも、『マイナンバー』と『マイナカード』の議論を分けて考える必要があるでしょう」と続ける。
「マイナンバーは国民全員に強制的に振られている12ケタの番号で、国や自治体の行政業務のなかで使われ、利用用途や利用主体などが厳密に管理されています。こちらでは大騒ぎになるような問題は起きていません。
一方のマイナカードは、4ケタの暗証番号を使うと『マイナポータル』にアクセスできて、そこに利用者が同意した情報が紐付けられていく。認可を受ければ国や自治体だけでなく民間企業なども使えます。マイナポータルから様々な個人情報が確認できるようなるわけですから、これは当然、任意で進められますが、利用者の側にその認識がどこまであるかというのが問題。いきなり紙の保険証を廃止してマイナ保険証に一本化すると言い出すなど、事実上の強制のようなかたちになっていることが問題と言えるでしょう」(荻原氏)
この先も難題は山積みとみられる。河野氏はマイナ保険証への情報の誤登録などについて7月末までに自治体など全保険者からどのくらいのミスなどがあるかを報告させるとしているが、荻原氏は「まず無理でしょう」と話す。
「たとえば東京・世田谷区は人口70万人ですが、70万人分の個人情報を全部突合するのに、どれだけの時間と人員が必要なのかという話です。ある自治体の幹部に話を聞きましたが、“全部突合するのは無理だから、適当に出さざるを得ないのだろうな”と言っていました。河野氏が“もう大丈夫です”と会見した後にもボロボロと問題が出てくるということの繰り返しになるのでは」(荻原氏)
本当に民主党のせい?
難題となる総点検の責任者となった河野氏だが、6月25日には新潟・新発田市で講演し、野党からの批判が相次いでいることについて「マイナンバー制度は民主党政権が作った制度。お前が始めたんだろうと言い返したくもなる」と愚痴をこぼしたことが報じられ、炎上している。この発言について荻原氏は「間違っていますよ」と断じる。
「マイナンバー制度は2016年1月に交付が始まったもので、たしかに2013年に可決された個人番号制度関連法案は、民主党が与党の時に法案として国会に提出し、自民・公明と協議、手直しをして成立したものです。
ただ、もともとはその前の自民党政権時代からの住基ネット(住民基本台帳ネットワークシステム)、住基カードの延長線上にあるもの。法案の可決からは10年以上が経過しているし、前述した通り、マイナンバー制度とは分けて考えるべき『マイナカード』を推進したのは自民党ですし、先頭に立ってマイナ保険証をゴリ押ししたのは河野さんです。それなのに野党に責任転嫁するなんて大間違いでしょう」
今後の総点検結果がどうなるのかも、注視していかなくてはならない。(了)