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【詳細図解】岸田政権の少子化対策 児童手当「第3子に増額」「所得制限廃止」は誤魔化しだらけ

 児童手当の所得制限を撤廃すると言いながら、一定以上の所得者にはむしろ負担増になるようなバランスの取り方を考えているわけだ。こうした「手当」と「控除」の関係は、政権が代わるなかでいいように使われてきたのだという。

児童手当の改悪史

児童手当の改悪史

 別掲図Eでその流れを整理したが、まず、かつての児童手当(小学生まで)に所得制限があったなか、2009年の総選挙では当時の民主党が「所得制限なしで中学生まで月額2万600円を支給する(子ども手当)」と掲げ、政権交代を果たす。

「民主党は政権を獲得しましたが、現実には財源不足を理由に、公約の半額にあたる月額1万3000円の手当の支給が2010年から始まりました。ただ、この時に子ども手当の支給と引き換えに、中学生以下の子育て世帯を対象とした『年少扶養控除』が廃止となりました。支給額が公約の半分になったにもかかわらず、です。加えて2010年の税制改正では、民主党政権が高校実質無償化を導入したことに伴い、16~18歳の特定扶養控除(所得税は65万円)が減額された扶養控除(同38万円)に変えられた。

 こうした控除の廃止は、手当の所得制限をなくすことと引き換えだという理屈だったはずですが、民主党政権末期の2012年には子ども手当に政権交代前の旧・児童手当のような所得制限が復活します。その年の総選挙では自民党が『年少扶養控除の復活』を掲げて政権を奪還しましたが、それから10年以上が経つというのにその公約は果たされていない。

 高校実質無償化も当初は所得制限がなかったのに、自民党政権は16~18歳の扶養控除の減額をそのまましながら、所得制限を導入しました。そして今さらに、16~18歳の扶養控除すらなくしてしまおうと検討しているわけです」(北村氏)

 時代ごとの政権与党によるご都合主義の歴史が浮かび上がってくる。これでは岸田首相がいくら「少子化は我が国の社会経済全体にかかわる問題であり先送りできない待ったなしの課題」「不退転の決意で取り組んだ」などと言っても、説得力はない。

【プロフィール】
北村庄吾(きたむら・しょうご)/1961年生まれ、熊本県出身。中央大学卒業。社会保険労務士、行政書士、ファイナンシャルプランナー。ブレイン社会保険労務士法人代表社員。YouTube「年金博士・北村庄吾の年金チャンネル」で、「異次元の子育て支援 児童手当法改正案を切る 第1弾」を配信中。

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