躍進を続ける日本維新の会。その創設者である橋下徹氏は、自民党が下野していた時代から安倍晋三・元首相と深い関係を築いていた。自民と維新の繋がりを紐解くうえで欠かせないその2人の真の関係に、“安倍にもっとも食い込んだ記者”と呼ばれた元NHK解説委員の岩田明子氏が斬り込んだ。【前後編の後編。前編から読む】
大阪自民が怒った菅のビラ
岩田:安倍さんは、憲法改正の話になると、よく維新との協力について口にしていたのを覚えています。2017年と2019年に憲法改正を具体的に提起した際、これを実現するためには、維新との連携が欠かせないだろうとも語っていました。
橋下:当時は我々の力不足で、世論を喚起することができなかったんですよね。だから、安倍さんも踏み切れなかった。
岩田:2018年1月の施政方針演説、覚えておられますか。教育の無償化を掲げましたが、これは維新へのメッセージでもありました。
橋下:それはもう、安倍さんと菅(義偉)さんにはいろんな面で応援してもらいました。大阪都構想も、大阪の自民党は大反対だったんですよ。だけど、安倍さんと菅さんは僕らを後押ししてくれた。菅さんなんて、公の場で「大阪都構想に賛成です」って言っちゃいましたからね。
岩田:そうそう、はっきり言っちゃいました。
橋下:だから、僕らもビラに菅さんのイラスト描いて、「大阪都構想に賛成です」って書いてばらまいたら、大阪の自民党が怒り狂っていた(笑)。
だけど、菅さんは、僕だから松井さんだから応援するというのではなく、大阪都構想を進めることが日本に必要だからというスタンスで一貫していた。安倍さんもそうです。万博もIR(カジノを含む統合リゾート)もリニアも、日本にとってプラスになるから、僕らを応援するんだと。
岩田:大阪万博誘致では、安倍さんの外交力がいかんなく発揮された。
橋下:トップ外交を展開して凄かったですね。
もともと大阪万博の構想は、僕と松井さん、堺屋太一さんで北浜(大阪市)の寿司屋で飲みながら、「万博やりたいね」で始まったんですが、最初は大阪の行政職員も財界も見向きもしなかった。「この成熟した時代に万博なんて意味ない」と。
だけど、安倍さんと菅さんが大号令かけたら、あっというまに進んだ。2018年のIRの法案も、これ以上先延ばしになると万博に間に合わないという事態になり、IRのためだけに国会の会期を延長し、安倍さんは「自分にしか答弁できない」と言って国交大臣に任せず、自ら答弁した。「ギャンブル国家にするのか」とボロクソに叩かれながら、法案を通してくれたんですね。