現在も多くの企業で採用されている「60才定年制」。しかし平均寿命が延びたいま、その年齢を超えても働き続けたいと考える人は多い。60才を過ぎたらどう働けばいいのか──「天職」を見つけたシニアにリアルな話を聞いた。
「フリーになると決めたのは定年退職の1か月ほど前。ギリギリの決断でした」
そう語るのは、元フジテレビアナウンサーの吉崎典子さん(61才)だ。
『おはよう!ナイスデイ』や『FNNスーパーニュース』などで活躍した吉崎さんは、2021年10月に定年退職を迎えた。そこから5年間は嘱託社員としてフジテレビに残ることもできたが、熟考の末に退職を決めた。
「フジテレビが大好きで居心地もよかったのですが、そのまま居続けても同じことしかできないと思いました。新しいことをやるにはいまの年齢の方がいいと思い立ち、決断しました。38年会社員を続けてやり切った思いがあり、もう卒業しちゃおうって」(吉崎さん・以下同)
退社を決意した吉崎さんは知人200人に“卒業”を知らせる挨拶状を出した。すると、かつて番組でコンビを組んだことのある生島ヒロシ(72才)が反応し、そのことがきっかけとなり生島の事務所「生島企画室」と業務提携。フリーアナウンサーとして活動することになった。
定年後も話す仕事を選んだのは、敬愛する「歌舞伎」への思いからだった。
「私は歌舞伎が大好きで、フジ時代から歌舞伎イヤホンガイド解説者や番組『密着!中村屋ファミリー』の監修をやっていました。退職後も歌舞伎の魅力を伝え、ファンを広げるお手伝いがしたくて、話す仕事を選びました。
おかげでいまは歌舞伎の配信番組のMCや歌舞伎関連のラジオ出演、コラムなどをやらせてもらっています。大好きでずっと続けたい分野で仕事ができることはすごくうれしいです」