現在も多くの企業で採用されている「60才定年制」。しかし平均寿命が延びたいま、特にその年齢を超えても働き続けたいと考える人が大多数だ。60才を過ぎたらどう働けばいいのか、老後資金を倍にするにはどうすればいいのか──「天職」を見つけたシニアにリアルな話を聞いた。
呉服販売会社の社員だったTさん(65才)は定年後、フリーの着付け師として写真館などで働く。
「在職中に取っていた着付けの資格に加え、定年後は『師範』の免許も取得しました。花嫁衣装や十二単の着付けもできるので重宝されています。ほかの着付け師との差別化のため、オリジナルの帯結びを考えたり、最新のファッションを研究したりと毎日が刺激的です」(Tさん)
丁寧な仕事ぶりから口コミで利用者が増え、依頼が絶えない。成人式シーズンは3日間、不眠不休で働いたことも。
「忙しくても本人や家族の笑顔を見ると幸せをお裾分けしてもらえます。しかも収入は定年前の倍に。自分の能力や頑張りが可視化できて励みになります」(Tさん)
元生保レディのSさん(70才)は60才で定年を迎えた後、夫婦でマンションの管理人を始めた。掃除や宅配便の管理など仕事量が多い割に給料はそれほど高くないが、夫婦の満足度は高いと話す。
「夫が定年後に老け込み、夫婦で働ける仕事を探しました。世話好きだった私には天職ですし、使命感の強い夫も満足して毎日が充実しています。住人のみなさんと触れ合えて感謝されることもありがたいですね」(Sさん)
元建設会社勤務のOさん(77才)は喫茶店めぐりが趣味で、定年後に退職金をはたいて喫茶店をオープン。一緒に店を切り盛りする妻(72才)は、製菓スクールに通ってケーキ作りを覚えた。
「体によい素材を用いて盛り付けも工夫したケーキはお客さんの評判も上々。親の遺産もあるので儲けを気にしなくていいのはありがたい。店は近所のシニアが安らぎに集まる憩いの場になり、新たな友人が増えました。定年後に新しい人間関係が築けるのは幸せなことです」(Oさん)