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【焼肉屋になったトップガン】元航空自衛隊パイロットの定年後の新たな挑戦 「月給18万円でも充実した日々」

元航空自衛隊1等空佐の朝長雅彦さん(撮影/比田勝大直)

元航空自衛隊1等空佐の朝長雅彦さん(撮影/比田勝大直)

 昨年、36年ぶりに映画『トップガン』の続編が公開され、全世界で興行収入10億ドル(約1400億円)を突破する大ヒットとなった。作品では歳を重ねて教官となった凄腕パイロット「マーヴェリック」(トム・クルーズ)の活躍と悲哀が描かれた。この映画の公開とほぼ同時期に、定年退職を迎えた航空自衛隊の「和製トップガン」がいる。第2の人生を歩み始めた彼はいま、焼肉店の従業員として日々奮闘中だ。【前後編の前編】

「わざわざ遠方から足を運んでいただき、ありがとうございます」――。

 取材に訪れた記者を笑顔で迎えてくれたのは、元航空自衛隊1等空佐の朝長雅彦さん(56)。1986年に自衛隊入隊後、26歳で主力戦闘機F-15のパイロット資格を取得し30歳で日本のトップガンコースにあたる「F-15戦技過程」を卒業。46歳まで主力戦闘機F-15のパイロットとして活躍した。最精鋭の戦闘機乗りとしての活躍のみならず、若手隊員の指導、ブルーインパルスのパイロットの育成にも携わった。

最後の任地は、自身がパイロットとして初めて飛び立った山口県の防府北基地。昨年9月、幹部自衛官(基地業務群司令)としてキャリアを終えた。そんな朝長さんが再就職先として選んだのは、同基地から車で15分ほどの距離にある「焼肉店」だ。

「『なんでイーグルドライバー(F-15パイロットの呼称)が畑違いの焼肉屋さんに?』と言われることもありますが、現役で空を飛んでいた10年ほど前から『定年後は自分で飲食店をやりたい』と考えていたんです。第2の人生はパイロットとはまったく違う道を歩きたい、そんな思いもありました。現在は修行の日々です」

 朝長さんの一日は長い。朝10時の出勤から夜11時過ぎまで、途中2時間の休憩を挟み、清掃や皿洗い、調理の補助などさまざまな業務に追われる。入店から8か月が経ち、今ではランチの弁当作りも任せられるようになった。

「実は今お世話になっている店のオーナーも、自衛隊の出身者なんです。店では食品・食材の徹底した衛生管理に始まり、お客様のオーダーをいかに早く、もっとも美味しい状態で提供できるかというオペレーションを日々学んできました。ホールでの接客時、お客様から『美味しかったよ』『ありがとう』とお言葉をいただくのが、何よりの励みになっています」

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