月々3万円の支払いだったとして、30年続けば1000万円に──。はたしてそれで、本当に“安心”を買えているのだろうか。物価高が続くなか、都内在住の主婦・Yさん(53才・仮名)は悩んでいる。
「夫婦で毎月3万円の生命保険料が財布に響いているので、見直そうと思っています。でも、“万が一のことがあったら”と考えると、やめる決断までできなくて……」
Yさんをはじめとして、日本人のほとんどは生命保険に入っている。生命保険文化センターによると、生命保険への加入率は男性77.6%、女性は81.5%(2022年)。性・年齢別に見ると、男女とも40~60代が特に高い。
生命保険は「生涯でマイホームの次に高い買い物」といわれ、1世帯が1年間に支払う保険料の平均は37.1万円である。30年間払い続ければ、軽く1000万円を超えてしまう計算だ。家計への負担が大きいと感じるのは当然だがその分、生涯にわたる“安心”が買えるのであれば安いものだと思っている人も少なくないだろう。
しかし、「生命保険は万能ではない」とファイナンシャルプランナーの長尾義弘さんは話す。
「そもそも死亡保険の場合は亡くならないと保険金は支払われません。また、医療保険に入っていても、当然ですが、入院などをしないと給付金は出ません。学費に困ったからといっても医療保険の給付額では補うことができません。毎月保険料を払い続けるよりも、それと同じ額を貯蓄や資産運用に回す方が、あらゆる『もしも』に対応できます」
終身保険と定期保険の違い
生命保険は大きく「終身保険」と「定期保険」に分けられる。一生涯保障され、死亡すれば保険金を受け取れるのが終身保険。「一定期間」あるいは「定められた年齢」までのみを保障するのが定期保険だ。生命保険会社での勤務経験を持つファイナンシャルプランナーの横川由理さんが言う。
「終身保険は必ず保険金が出るので貯蓄性がありますが、その分保険料が高く、貯蓄としては利率が悪い。金利が高かった20年前のものなら銀行に預けておくより増えますが、特に最近加入した終身保険は元本割れのリスクが高い」