非上場株なら相続時精算課税制度
また、親から贈与された株を売却する場合も、相続時と同様に、売却価格から「親の取得費」を差し引くことになる。岸氏は、子供の側も株取引をしている場合、「損益通算」に活用できる可能性もあるとする。
「たとえば、親がバブル期に1000万円で買い、現在の価値で100万円の株を子に贈与したとします。贈与税はゼロで済むし、その株を子供が売ると、“900万円の損失”が出たことにできる。仮にその子供が自分の株取引で900万円の利益を出していたら、損益通算の仕組みによって相殺され、その年に得た譲渡益はゼロで、かかる税金もゼロにできます」
一方、親が家業の経営者などの場合は非上場株を受け継いでいく場合もある。山本氏はこう言う。
「非上場株の場合、会社が安定しているなら価値は年々上がっていくので、暦年贈与ではなくもうひとつの贈与税の仕組みである相続時精算課税制度と相性がいいとも考えられます。贈与時に贈与税は(累積2500万円まで)発生せず、相続発生時に贈与分もまとめて相続税を計算する制度です。贈与時の評価額で相続税が計算されるので、株価が上がっていくなら有利。非上場株は計算方式が決まっており、決算状況から株価推移の予想がつく。安い株価の時に多めに贈与するなどの計画が立てやすいのです」
株は価値が変動するので、現金の相続・贈与に比べて考えることが多い。
「譲渡所得税などを加味するとなれば、経験豊富な専門家のアドバイスを受けるのがいいでしょう」(山本氏)
日本株上昇局面で、準備すべきことは多そうだ。
※週刊ポスト2023年7月21・28日号