蝋燭(ろうそく)に火を灯して線香をあげ、仏壇に手を合わせる──。古くから、日本人はこうして亡くなった人々へ思いを馳せてきた。しかし、その習慣もライフスタイルの変化や技術の進化と共に変わりつつある。
国内蝋燭最大手メーカーであるカメヤマ株式会社が販売するLED式蝋燭「いろはあかり」が、発売5年で約30万個出荷というヒットとなっている。実際に火をつけることなく使えるLED式蝋燭だが、その人気の背景には何があるのか。カメヤマ株式会社に話を聞いた。
若年層の“供養離れ”と高齢世帯の増加
同社総務部の担当者によれば、「仏教では、死者を弔う上で蝋燭の火はとても重要で、浄土への道を照らす意味がある」という。
ただし近年、直火式蝋燭を備える、昔ながらのスタイルの仏壇を置く家庭は減少している。背景には、無駄なものを省く生活を求め、墓参りや仏壇にも“利便性”や“コンパクトさ”を求める人が増えているという世相の変化がある。
「親と子供のみで暮らす核家族化が進み、家族を自宅で弔う機会の減少や、居住スペースの問題から、自宅にお仏壇や神棚などを置く家庭が少なくなりました。それにより毎日ご先祖に手を合わせるなどの習慣が減ったことが、供養という伝統が薄れている一つの原因のように思います。とりわけ若年層の“供養離れ”は顕著です」(「」内カメヤマ担当者、以下同)
高齢者世帯および高齢者の一人暮らしの増加とともに、安心・安全という観点で直火式蝋燭を躊躇する人も増えている。昔ながらの蝋燭は、転倒すると燃え広がって火事につながるリスクがあるためだ。このような複合的な事情で、仏壇とそこに備える蝋燭の需要が減ってきているというわけだ。