価値観が多様化する中で、家族が死んだ後、葬式やお墓のかたちをどうするかについても、様々な選択肢が出てきている。ただし、たとえ故人の遺志だとしても、法律に反する行為は慎むべきだろう。
葬儀や納骨は民法や「墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)」などで定められる。
まず、死亡届は死亡の事実を知った日から7日以内に提出しなければならない(戸籍法86、87条)。さらに、死後24時間以内の火葬禁止(墓埋法3条)や墓地以外での埋葬、火葬場以外での火葬の禁止(同4条)など細かく定められている。
葬儀・お墓コンサルタントの吉川美津子氏は「死亡届の届け出等は葬儀会社がアドバイスしてくれます」とした上で、覚えておくべき条項として民法の「祖先の祭祀を主宰すべき者の承継」(896、897条)をあげる。
「お墓を継ぐ“祭祀承継者”は原則1人で、旧民法下では長男が継ぐものとされてきたが、現在はその限りではない。複雑な家族関係である場合は揉めやすいので、遺言で決めておくほうがよいでしょう」
最近は「お墓はいらない。自分が死んだらどこかに散骨をしてほしい」という意向を持つ人も少なくない。ただし、墓のいらない散骨でも注意が必要だ。
「墓埋法に散骨に関する記載がないため、関係省庁の非公式見解の“海への散骨は節度ある範囲であれば違法とはいえない”という解釈をもとに行なわれています。宇宙葬など散骨への関心が高まっているため、今後、法で細かい規定ができる可能性もある」(吉川氏)
※週刊ポスト2019年8月9日号