川辺謙一 鉄道の科学

【廃止された理由】蒸気機関車は電気機関車やディーゼル機関車と比べてどれほど“非効率”なのか

煙と蒸気を吐きながら走る蒸気機関車。2005年7月真岡鐵道下館駅にて

煙と蒸気を吐きながら走る蒸気機関車。2005年7月真岡鐵道下館駅にて

 鉄道は、多くの人にとって交通の手段としてだけでなく、趣味や娯楽の対象としても親しまれており、ときに人々の知的好奇心を刺激してくれる。交通技術ライターの川辺謙一氏による連載「鉄道の科学」。第13回は「消えた蒸気機関車」について。

一度日本から消えた蒸気機関車

 蒸気機関車は、人気が高い鉄道車両の一つです。大きな音を立てながら煙突からモクモクと煙を出し、蒸気を吐いて走るさまは、他の鉄道車両では味わえない迫力があります。

 それゆえ夏休みになると、蒸気機関車がけん引する客車列車(SL列車)が大勢の人で賑わいます。現在日本の鉄道事業者(鉄道会社)に在籍している蒸気機関車は20両(日本鉄道車輌工業会調べ)あり、行楽客の目を楽しませています。

 ところが日本の鉄道では、1976年にすべての蒸気機関車が廃止されました。現在走っている蒸気機関車は、いったん廃止されたのちに走行できるように復元された(動態保存されている)ものです。

 それではなぜ日本では、一度すべての蒸気機関車が消えたのでしょうか。今回は、その謎に迫ってみましょう。

動かすための効率が悪い

 まずは結論から言います。蒸気機関車は、電気機関車やディーゼル機関車とくらべて動かすのに多くの労働力と時間、費用を必要とし、非効率であるゆえに、電気機関車やディーゼル機関車に置き換えられて消えたのです。

 もちろん、走行中に煙や煤(すす)を排出することも、蒸気機関車が敬遠された理由の一つです。ただ、廃止の決め手になったのは、先ほど述べたように、多くの労働力・時間・費用を必要とすることだったのです。

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。