川辺謙一 鉄道の科学

【廃止された理由】蒸気機関車は電気機関車やディーゼル機関車と比べてどれほど“非効率”なのか

エネルギー効率が高い電気機関車やディーゼル機関車

 いっぽう電気機関車やディーゼル機関車は、キー操作ですぐに起動し、1人で運転することができますし、運転前後の保守作業も蒸気機関車よりも短時間で終わります。また、これらは蒸気機関車よりもエネルギー効率が高いので(下の図)、運転に必要な費用が安く済むというメリットがあります。さらに電気機関車は、外部から電力の供給を受けながら走るので、燃料や水を供給する必要がなく、長距離を連続で走ることができます。

エネルギー効率(けん引に有効に利用できるエネルギーの割合)の比較。蒸気機関車は、電気機関車やディーゼル機関車よりもエネルギー効率が低い(データ出典:鉄道電化協会編『電気鉄道要覧』1973年,表1.2)

エネルギー効率(けん引に有効に利用できるエネルギーの割合)の比較。蒸気機関車は、電気機関車やディーゼル機関車よりもエネルギー効率が低い(データ出典:鉄道電化協会編『電気鉄道要覧』1973年,表1.2)

 つまり、蒸気機関車を電気機関車やディーゼル機関車に置き換えれば、必要とする労働力や時間、費用を節約でき、鉄道を効率よく運営することが可能になるのです。

 このため日本の鉄道では、蒸気機関車の走行性能に匹敵する電気機関車やディーゼル機関車が開発されたのちに、蒸気機関車が徐々に削減され、最終的にすべての蒸気機関車が廃止されました。

 以上のことを頭に入れてSL列車に乗ると、またちがった楽しみ方ができるかもしれませんよ。

【プロフィール】
川辺謙一(かわべ・けんいち)/交通技術ライター。1970年生まれ。東北大学工学部卒、東北大学大学院工学研究科修了。化学メーカーの工場・研究所勤務をへて独立。技術系出身の経歴と、絵や図を描く技能を生かし、高度化した技術を一般向けにわかりやすく翻訳・解説。著書多数。

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。