また、発表の内容とは関係なく、このタイミングを狙って大口の売買をしようとする投資家がいることも、予測できない値動きを引き起こす理由のひとつです。
たとえば、すでに利益が乗ったポジションを持つ大口の機関投資家が指標発表の直後を狙って利益確定の決済をしてくる、ということが見られます。発表を受けて上に行こうとする瞬間に売りをぶつけてくると瞬間的に大きく下振れするわけです。こうした場合は指標発表の結果がプラスのサプライズだったとしても、急落することになります。そしてこの売りがさばけてしまうと、一気に反転上昇するという動きをします。
また、上下どちらに行くかはわからないけれど、大きな値動きが予想される場合には、あらかじめ両建て(ロングとショートの双方でポジションを持っておくこと)をしておくトレーダーもいます。両建ての場合は損失が大きくならないよう必ず逆指値の損切り注文を入れておくので、こうした損切り注文で値動きが翻弄されることもあります。
また、これらの損切り注文を根こそぎ刈り取って、ふるい落としてから上昇や下落をさせようとする大口トレーダーもいます。
要するに、指標発表直後のマーケットは、さまざまな市場参加者の欲望や思惑がぶつかり合っている魑魅魍魎(ちみもうりょう)の世界なのです。指標の結果にかかわらず、どんな値動きをするかは誰にも予想できないので、指標発表直後は決してトレードせず様子見を決め込むのが正解です。
値動きが落ち着いたタイミングまで待つ
こうした理由から、僕は重要な指標発表の前後はトレードを避けています。具体的には、発表の15分前ぐらいになったら新しいエントリーはせず、そのときに手がけているトレードがあれば決済し、ポジションを持たずに発表時刻を迎えるようにしています。そして、発表後も20分程度はトレードせずに値動きを見守ります。
これは、指標発表直後は値動きがランダムで読めないからという保守的な理由ももちろんありますが、それだけではありません。こうしたリスクの高いタイミングでわざわざトレードしなくても、少し待っていれば極めて勝率の高いエントリーチャンスが訪れることが多いからです。
たとえば図表13のチャートのように、指標発表直後に急落した場合でも、かなりの割合で何もなかったかのようにV字回復するタイミングが訪れます。この動きが見られたら、回復してきた上方向の動きが本物の流れになりそうだという視点でチャートを監視していきます。
こうした場合、発表前の高値を超えて上昇を続けますが、やがて上にある抵抗線に押し戻されて下落に転じます。下落に転じたことを確認したら、エントリーのチャンスです。この下落がずっと続くことは少なく、かなりの確率で反発してくるので、そこを狙うのです。