【ケース2】電気を止めたくても、契約先がわからない
おひとりさまが亡くなり、きょうだいが相続。分譲マンションは売却する方向で話が決まり、遺品整理も無事に終わり、水道とガス、電気を止めようとしたとき……。水道とガスは手間なく契約解除できたが、電気会社がどこかがわからない。部屋に「使用料のお知らせ」はなく、通帳に引き落としの記録もない。「どこだ?」と探していたがわからず、携帯電話を解約した際にようやく通信会社の新電力に契約していたことが判明。電気料金はキャリア決済で携帯電話料金と一緒に引き落とされていたため、一切の形跡がなかったのだ。
「電気や携帯電話の解約だけでなく、人が亡くなったときに行うべき手続きはたくさんあり、しかも最近ではデジタル上での契約が多く、わかりにくくなっています。たとえば、クレジット決済で自動更新されているサブスクなど、あらかじめ情報を残しておいてもらわないとわかりません。情報を整理して残すこと、そして、誰に事務手続きをお願いするのかは考えておく必要があります」
【ケース3】最期の世話をしてくれた人に遺産を渡せない
両親はすでに他界し、兄と妹が幼い頃から折り合いが悪く、長く絶縁状態。ただ、姉の娘は「おばさん!」と慕ってくれ、交流が続いていた。葬儀と納骨はその姪に頼み、「そんなに多くはないけど、遺産は全部あなたが受け取ってね」という口約束もしていた。本人は安心して旅立つことができたのだが、姪は一切の遺産を受け取ることができなかった。
「このケースでは姪との意思疎通ができていましたが、本人が『姪や甥が面倒をみてくれるだろう』と思い込んでいるだけというケースも少なくありません。世話になるつもりであれば、本人たちの意向を確認しておきましょう。また、感謝の気持ちをどう残すのかも、あわせて決めておきます。生前贈与や死亡保険金、遺産を渡すなどさまざまな方法がありますが、世話をしてくれた人が相続人でない場合は、遺言書を残すべきです。このケースのように、きょうだいが存命であれば、その子(姪・甥)は相続人となりません」
こうしたトラブルを避けるために、おひとりさまはどう備えればいいのだろうか? 方法としてあるのが「死後事務委任契約」と「遺言書」だ。
生きた痕跡を整理してもらう「死後事務委任契約」
「『死後事務委任契約』は亡くなったあと、遺産に関すること以外のすべての事務作業をおこなってもらう契約です。その人が生きてきたすべての痕跡をきれいに整理していきます。みなさんが思っている以上に、やるべきことは多岐にわたり、1年ぐらいかかることもあります」
たとえば、病院や施設で亡くなったら、葬儀社に連絡をして搬出の手配し、死亡診断書を受け取って死亡届の提出。その後、通夜、葬儀や納骨などの供養をおこなう。
病院や入所していた施設への支払いや生活用品や家財道具といった遺品の整理と処分のほか、健康保険や介護保険、各種納税の公的な手続きをし、電気やガス、水道、インターネット、クレジットカードの契約解除もある。退会手続きや不要な郵便物の送付停止手続き、SNSやメールアカウントの削除だってしなくてはならない。