遺産相続は、家族や親族間でとんでもないトラブルに発展することもある。普段の生活が苦しい人の場合、遺産を相続できるかどうかがその後の生活を大きく左右することになるからなおさら必死になる。ここでは、義母と相続トラブルになった40代シングルマザーのケースとともに、専門家のアドバイスを紹介する。
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夫が6年前に病気で他界してからは、私(45才)と息子の正樹(13才・仮名)で、つつましく生活してきました。
そんな折、義父(73才)の訃報が。正樹は義父の直系孫で、ずいぶんかわいがってもらっていたこともあり、息子と2人で葬儀に駆けつけました。すると葬儀の最中、義母(71才)から思いもよらぬお願いが──。
「主人は遺言書を残さずに亡くなったの。法定相続分通りだと、主人の遺産を私と孫の正樹で半分ずつ分けることになるのよね」
聞けば、義父が残した遺産は、時価約6000万円の家と、2000万円の現預金。ということは、4000万円ずつ正樹と分けるのが筋だ。しかし現預金が2000万円しかないので、均等に分けるためには家を売却しなければならない。すると義母が、
「正樹はまだ中学生でお金の価値もわからないし、あなたがまだ元気で働いているんだからそんなに必要ないでしょ。私は住む場所がなくなったら困るし、働けないから現金だって必要なの。相続を放棄してくれない? じゃないと私、生きていけないわ」
と、か弱き未亡人を演じつつも、図々しいことを言ってきたのです。
「お言葉ですが、年金がございますよね?」
と聞くと、
「自営業だったから、国民年金だって年間60万円くらいしかもらえないわ。それじゃあ、生きていけないでしょう。この老婆から、長年住んできた家を取り上げるなんて、むごいわ! お願いよ。私からこの家を取り上げないで!!」
と、人目もはばからず大声で泣きだしたのです。葬儀場でのことなので、近所の人などにも見られて、まるで私が意地悪をしているよう。
うちだって死んだ夫に財産はなく、シングルマザーで稼ぎも少ない。正樹には大学進学をあきらめてもらっているのに……。4000万円とまではいかなくても、正樹の学費くらいはもらえないものか、相談しようにも大声で泣いて話になりません。
結局、お金がかかりますが、弁護士に間に立ってもらうことに。争うつもりなんてなかったのに、私たちが悪者みたいにされて、納得がいきません。