元本割れのリスクがある金融商品の購入にあたって、「投資は自己責任が原則」とされる。しかし6月23日、金融庁が千葉銀行など3社に出した業務改善命令で、その原則が成り立たないような販売実態があったことが明るみに出た。
金融庁が問題視したのは、千葉銀などが個人顧客向けに販売していた複雑でリスクの高い「仕組み債」。これを十分な説明のないまま、投資未経験者に販売していたという。
仕組み債については、購入した顧客からの苦情が多いこともあり、かねて問題視されてきた。金融庁の調査によると、昨年3月末の時点で地銀の8割が仕組み債を扱っていたが、同11月までには3割まで減少。販売停止が相次いだ。
なかでもすべての地銀が販売を停止した他社株転換債(EB)と呼ばれる仕組み債では、あらかじめ8~10%の手数料を引いた後の利回りが顧客に提示されるのが一般的だったという。実際の利回りが15%の商品の場合、顧客には5%程度の利回りを提示して販売していたことになる。
購入する顧客には価格に含まれる手数料の額が見えないため、リターンに見合わないコストを負担し、かつ、元本割れのリスクも説明された以上に高かった可能性がある。経済ジャーナリストの森岡英樹氏が言う。
「さまざまな金融派生商品(デリバティブ)が組み込まれた仕組み債の中身は複雑で、プロでも内容を把握するのが難しい商品が少なくない。内包されるリスクが、どこに、どのようにあるのかが見えにくいため、本来、機関投資家向けの商品であり、一般の個人に売るような商品ではないと考えます」