購入者の側が知っておくべきことは多い
なぜ、顧客の利益を損なう恐れのあるリスクの高い金融商品の販売が盛んに行なわれてきたのか。
「超低金利下で伝統的な預貸業務による利鞘収益が期待できないなか、“手数料ビジネス”に頼らざるを得ない現状が背景にあると思います。特に、海外部門の収益が多くない地銀ほど、投資信託や保険販売による手数料収入を重視する傾向があります」(同前)
銀行窓口で投信や保険商品の販売が解禁されて以降、「手数料収入」が重視されるようになったという。
「担当者は『(銀行員の)私もやっています』『嫌になれば1年でやめられます』などのセールストークを用いて勧誘しますが、やはり、販売する側は自分たちが売りたい商品に顧客を誘導しがちだと思います」(同前)
経済コラムニストの大江英樹氏もこう言う。
「銀行や証券会社などの金融機関にとっての“おいしい商品”は、やはり手数料が高く儲かる商品。それは必ずしも顧客にとって有利な商品とは合致しないということです」
購入者の側が知っておくべきことは多い。
「例えば金融機関が退職金の入った人向けに積極的に勧めるのが、高金利の定期預金と投資信託を合わせたパッケージ商品です。一見すると魅力的ですが、定期の高金利は期間限定であったり、投信の手数料が平均より高額であったりします」(同前)
老後資金の不安に駆られて退職金で投資デビューする際や、金融知識に乏しい富裕層、遺産相続などでまとまったお金を手にした人などは、自ら知識を身につけることが重要になるのだ。
※週刊ポスト2023年8月4日号