ことほどさように時代遅れで使えないマイナンバーカードのシステムは、私が10年前から提言しているように、さっさとオールクリアして「国」と「個人」をデジタル的に双方向でつなげる国民DBにゼロベースで作り直すしかない。
河野デジタル相は「マイナンバー制度とカードが混乱している」として、2026年からの更新に伴い「マイナンバーカードという名前をやめたほうがいいのではないか」と述べたそうだが、事はそういう表面的な問題ではないのである。デジタル社会形成の司令塔とされる役所のトップがこの程度の認識では、マイナンバーカード自主返納の動きはますます加速するかもしれない。もしそうなれば、この問題が原因で支持率が落ちている岸田政権の屋台骨は大きく揺らぐだろう。
【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『世界の潮流2023~24』(プレジデント社刊)など著書多数。
※週刊ポスト2023年8月4日号