とにかく、私が仕事をしてこられたのは夫や家族、職場の仲間のおかげが大きいんです。なんせ私は専業主婦ですから、ひとりでは何もできません。代表取締役に就任したときも、経営のことはわからない。潰れかけの店を現場で一緒に働きながら立て直すことはできても、会社全体の財務についてはチンプンカンプン。ですからそれは専門家に任せて、私がやったのは、お母さんらしく“人育て”──なんて偉そうなことを言いましたが、人は簡単には育ちません。子供も社員も思う通りにはいきませんよね。
ですから、どんな立場になろうが、上から目線にならず、本音でつきあうことを座右の銘にしました。現場の皆にやる気を出してもらうため、時に怒ったり、おせっかいおばちゃんを発揮してお弁当を作ったりしてね。
何をするにも大切なのは“人”だと思うんです。ですから私、70代にして人づきあいを増々盛んにしています。年賀状やお中元、お歳暮なんかを大切にしてね。もう年だから、と思ったら人は終わり。人生100年時代、私にはあと30年もありますから、生きていくなら楽しい方がいい。専業主婦の私に仕事をさせてくれた皆に感謝しつつ、これからもお母さん目線で、いただいたご縁に真正面から向き合っていこうと思っています。
【プロフィール】
橋本真由美(はしもと・まゆみ)/1949年福井県大野市生まれ。病院などで栄養士として勤務後、結婚。神奈川県に移り住み、専業主婦に。41才のとき、パートとしてブックオフに勤務。57才で代表取締役社長に。現在は退任し、公益財団法人相模原市まち・みどり公社理事長に。
※女性セブン2023年8月3日号