ある日、仕事をしなくてはならない状況となった専業主婦が、ついに社長となった──。日本初のハンバーガーチェーン「ドムドムハンバーガー」を運営する株式会社ドムドムフードサービス代表取締役社長・藤崎忍さん(56才)が、主婦から社長になったその経緯を振り返る。
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私の人生が一変したのは、忘れもしない39才のときでした。墨田区議会議員だった夫(当時52才)が、東京都議会議員選挙に立候補しましたが、落選。その直後、心筋梗塞で倒れてしまったんです。当時、私は専業主婦ですから、夫が倒れて、わが家の収入はゼロに。それどころか、選挙費用の借金も残っていますし、当時15才だった子供の教育費もかかります。私が働くという選択肢しかなかったわけです。
とはいえ、私は短大を卒業すると同時に21才で結婚。就職経験もパート経験もナシ。18年間ずっと専業主婦です。とりあえず知人に就職先を相談したところ、「母が経営する『渋谷109』のアパレルショップで働かない?」と声をかけてくださったんです。
「渋谷109」といえば、当時はギャルの聖地。ローライズデニム(※股上が浅いデニムパンツのこと)からTバックを見せる、エロかっこいい系ファッションが人気で、店員も“見せるための下着”なんていうのを、身に着けていました。アラフォーの私には衝撃的でしたよ(笑い)。
私の周りの店員もお客さまも10代や20代の女の子ばかり。彼女たちは自分のファッションに自信を持っていて、全身から「私を見て!」というオーラを放ち、輝いて見えました。保守的な環境で育った私にとって、彼女たちは新鮮で刺激的。自分が見てきた世界の狭さを知りました。
居酒屋の女将と夫の介護を両立
ところが5年後、会社の経営方針が変わり、「渋谷109」で働けなくなったんです。そこでどうしようかと考え、店を立ち上げることにしたんです。
だって私には何のスキルもなかったんですから……。エクセルもできないし英語も話せない。44才でその状態なのに一般企業に就職できるのか。さらに当時夫は要介護4の状態でしたので、介護もしなければならない──。
つまり起業は必要に迫られての選択でした。