新社長が創業者を褒めるのも「あり得ない話」
後任の社長には和泉伸二・専務取締役が就任することも発表されたが、その発言にも増沢氏は首を傾げる。
「当然の話ですが、こういった謝罪会見や不祥事を受けての会見においては、まずどんなことがあっても“身内を褒める”という言葉を口にするのはあり得ないんです。逆に、兼重社長が今回の問題で責任を問われている息子の宏一副社長を徹底的に叱ってみせるといったことは、会見の方法論としてはあり得ます。
にもかかわらず、新社長の和泉専務は『これまで弊社創業者の兼重宏行のリーダーシップと卓越したビジネスモデルにより、いまや業界を代表する企業になった』と述べていました。その話しぶりから、これまでの社内において社長が絶対的な存在で、ものごとが社長中心に動いていたり、報告しにくい情報が上がらない仕組みになっていたりしたであろうことが見て取れました」
「ゴルフに対する冒涜」はギャグかと思うほどピント外れ
その他に会見では、顧客の車を傷つける際にゴルフボールを靴下に入れて車体を叩くという行為があったことについて兼重社長は「ゴルフを愛する人に対する冒涜」と述べており、ネット上でも奇妙な表現であることが話題となったが、増沢氏はこう話す。
「『ゴルフに対する冒涜』というのは、聞いている側からするとギャグかと思うぐらいにピント外れな発言でしたよね。もちろん、兼重社長がふざけているわけでないとはわかっていますが、それほどに現実感がない発言で、本当に事態の深刻さがわかっていない“裸の王様”であることが透けて見えたと思います。
本来なら、『こんな詐欺は絶対に許せません。私が総責任者なんだから、そんなことを自分の部下が、会社がやったということは本当に悔しいです』といった発言がないとおかしいのに、そこまでの緊急事態であるという認識が欠けていたのでしょう。絶対的なトップがいる企業ほど、こうした危機には弱い。そのことが露呈した会見だったと思います」
果たしてビッグモーターは新体制のもとで顧客の信頼を取り戻せるのか。その前途は険しそうだ。(了)