「普通の女性」にとって選挙はハードルが高すぎる
なぜ日本では女性議員が一向に増えないのか。
「そもそも日本の政界は女性が立候補することが難しい」と指摘するのは、女性と政治に詳しいジャーナリストの大門小百合さん。
「国政選挙に立候補するには政党の後ろ盾が必要ですが、“普通”の新人にはそれを獲得することは非常に難しい。現にいまの自民党の衆議院議員の3割ほどが『世襲』です。
また、“永田町の慣習”として、時に業界団体の意向をくむことが求められますが、そうした業界のドンと“普通”の女性が渡り合うことはそう簡単なことではありません。経験ある男性が力を握る構造のなか、女性は政治のスタートラインに立つことすら厳しい状況です」(大門さん)
実際に立候補の難しさを肌で感じたというのは、国民民主党の伊藤孝恵参議院議員だ。伊藤議員はリクルートに在職中の2015年、次女の耳の障害をきっかけに、民主党の候補者公募に応募。2016年の参議院選挙に出馬した際は、1才と3才の子供を育てており、育休取得中に国政に挑んだ女性は史上初めてだった。
「育児出馬への批判のみならず、義理の父と母は『子供が不幸になる』と立候補に反対でした。そして選対(選挙対策本部)には昼夜を問わない選挙戦に備え、ひとりホテル住まいをするよう指示されました。それが“選挙戦のセオリー”なんです。でも、授乳中だった私は子供と離れることなど物理的にも精神的にも不可能で、結局、選挙期間中も家から通い、街宣車の中で授乳したりトイレで搾乳したりして乗り切りました」(伊藤議員・以下同)
資金面でも大きな壁が立ちはだかっていたという。
「全県区の参院選は人件費や宣材費を含めると5000万~1億円の費用がかかります。もちろん党からの援助はありますが、足りない分は20年間の会社員生活の貯金と借金、なけなしの資産売却で何とか捻出しました。
お金はかかるし、選挙のイロハはわからない。徹夜で演説内容を考えながら乳幼児2人を育てる毎日は、明らかにオーバーワークでした。でも、それを受け入れなければスタートラインにも立てない。政治未経験の母親が選挙に出る厳しさを実感しました」