酒税は答申通りに増税になった
宮沢氏は、首相との面会後に記者団に対して、「政府税調はものを決める機関ではない」と説明して、中期答申についても「今の政府税調のメンバーの最後ということで、卒業論文みたいなもの。正直言って制度の紹介がほとんど」などと話して“大して意味のない答申”だと強調しようとしていたが、本当にそうであればそんな答申をわざわざ岸田首相が自ら受け取る必要がないだろう。
財務省ホームページの税制改正のプロセスを解説する欄を見ると、〈政府税制調査会が中長期的視点から税制のあり方を検討する一方、毎年度の具体的な税制改正事項は与党税制調査会が税制改正要望等を審議し、その後取りまとめられる与党税制改正大綱を踏まえて、「税制改正の大綱」が閣議に提出されます〉という手順が説明されている。政府税調は税制改正のプロセスのなかに位置づけがなされており、宮沢氏の発言は政府税調の存在をことさらに軽く見せようとしていたことが窺える。
加えて、政府税調の「中長期的視点」からの検討が、その後実際に国民の負担増に結びついている例もある。ベテラン政治ジャーナリストはこう言う。
「たとえば、2005年の政府税調の答申を振り返ると、発泡酒や第3のビールが登場してヒットした状況を受け、『酒類の分類の簡素化を図り、酒類間の税負担格差を縮小する方向で早急かつ包括的に見直すべきである』という文言が入っている。そして、この文言をなぞるように、今年10月からは段階的にビール系飲料の税率を一本化するという“第3のビール増税”が進められます。政府税調は“ものごと決める機関”ではないかもしれないが、なんの影響力もないということはあり得ません」
こんな誤魔化しだらけでは、さらなる支持率下落は避けられないのではないか。(了)