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【日産、キヤノン、相鉄ホールディングス】「株価上昇につながる上方修正」と「そうではない上方修正」の見分け方

決算書に出ない数字を読み取る必要性

 決算書には売上、利益などの数字が書かれている。また、前年の業績数字も記載されていることから、企業の成長度合いも前年比で測ることができる。

 業績見通しで従来予想よりも上振れを見込む発表を上方修正という。現在のような為替の方向感が不明瞭な状況で上方修正が出たとしても、それを素直に好材料として受け取ることができるかどうかは精査する必要があるだろう。

 たとえば売上の数字を単純化すると、「単価×個数(客数、販売台数)」という数式で説明できる。利益も基本的には、それに準じて上下すると考えて良い。単価増も個数増ももちろん好感される材料であるが、現状の為替見通しの不透明さを背景にすると、今後の単価見通しが不確定となる企業が多くなりそうだ。もちろん各社とも想定為替レートを用意して売上、利益の計算をしているが、それがずれてしまうから上方修正、下方修正がなされるわけだ。

 つまり、円安を理由として上方修正を発表した企業に対しては、投資判断を下すにあたり、より深い精査が必要となる。逆に、個数(客数、販売数)増での上方修正であれば、より積極的に「上目線」(上昇を期待)として注目して良いと考えられる。

 以上の観点から、上方修正を見るうえで重要と思われることを、いくつかの銘柄を例に考えていきたい。

日産自動車(7201)は売上増、個数減

 日産自動車(7201)は7月26日に2024年3月期の第1四半期決算を発表し、今期見通しを売上、利益ともに上方修正の発表をした。

 その理由として、「円安の追い風で売上高や利益を大きく向上」という会社発表をしている。同時に「2023年度の販売台数は、前回見通しに対して7.5%減となる見込み」との発表もしている。

 これは先に述べた、「売上=単価×個数(客数、販売台数)」の公式にあてはめた場合、為替の円安影響での単価増で個数の減少をカバーしたということになる。企業の値決めによる単価増と為替による単価増では内容は全く異なる。そして、販売台数の減少見込みという事象は決算書の売上にも利益にも反映されないことから、この上方修正は素直に好感できないものと考え、私は「今はまだ要監視」と判断した。

 7月26日決算直前の終値656.8円。7月31日の終値は623円の株価となっている。上方修正を出した銘柄であれば、発表直後は一直線上昇も期待できるにもかかわらず、今のところ軟調と言える。

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