キヤノン(7751)は配当増額も円安想定の上方修正
キヤノン(7751)は7月27日に2023年12月期の第2四半期決算を発表し、今期見通しを売上、利益ともに上方修正するだけでなく、配当の増額修正も発表した。その理由として、「通期の前期比で米ドルは約3円の円安、ユーロは約7円の円安とし、前回公表から米 ドル、ユーロともに5円の円安を想定」「この為替レートを前提として前回公表から上方修正」と会社発表をしている。
これも想定為替レートを起因とした上方修正と考えられる。配当の増額修正は好感できる材料と考えられるものの、やはり前述の日産自動車同様、「まだ慎重に監視すべき」と判断した。
7月27日決算直前の終値3759円。7月31日の終値は3673円と株価となっている。上方修正を出した銘柄であれば、発表直後は一直線上昇も期待できるにもかかわらず、前述した日産自動車同様、今のところ軟調と言える。
相鉄ホールディングス(9003)は為替とは無関係の情報修正
相鉄ホールディングス(9003)は7月27日に2024年3月期の第1四半期決算を発表し、上期、通期見通しを売上、利益ともに上方修正している。その理由として、「ホテル業における増収」と会社発表をしている。
これは前述した「単価×個数(客数、販売台数)」の式で考えた時に、売上が単価、個数ともに増加をしたことが考えられ、またそれによって利益も比例して伸長したことが予想できる。会社発表の中で、為替を起因とした変動については一切記述が見当たらなかった。この内容であると、積極的に上目線で見ても良いと考えられる。
7月27日決算直前の終値2520.5円。7月31日の終値は2,750.5円と株価上昇している。
上方修正の精査が必要な難しい相場に
以上の通り、現在の相場環境は、個別業績がいくら良くても株価が簡単には上昇しない環境になっている。これはマクロ経済環境で為替の先行き不透明さを示しているのに対し、個別企業が為替の円安を理由とした上方修正を出しているという、いわば矛盾した状況が原因と考える。
日銀の緩和修正が発表され、日本国債長期金利の利回りはそれまで頭打ちとなっていた0.5%を完全突破した一方で、予測された円高には向かわずに円安ドル高傾向へと進んでいる。