今年6月2日、厚生労働省が発表した2022年の日本人の人口動態統計は各方面に衝撃を与えた。「合計特殊出生率」が1947年以降で最低の「1.26」を記録したからである。2022年の出生数に関しても77万747人と、1899年の統計開始以来はじめて80万人を下回り、いま日本で過去最悪レベルで少子化が進行していることが浮き彫りになった。社会を支える世代の減少は、年金をはじめとする日本の社会保障制度にも大きな影響を与える。「年金博士」こと社会保険労務士の北村庄吾氏は「このままでは年金制度は崩壊するのは必至」と危機感をあらわにする。
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今の日本では、本当の意味での異次元の少子化対策が必要になってきています。どうにかして手を打たないと、年金、医療、介護など、あらゆる制度が事実上崩壊してしまうでしょう。
2022年、一人の女性が生涯で出産する子どもの数を示す「合計特殊出生率」は「1.26」となり、過去最低を記録しました。合計特殊出生率は7年連続で減少し、2005年と並び過去最低の数字です。2022年に生まれた子どもの数は前年から4万人余り減少し、77万747人。合計特殊出生率だけでなく出生数も過去最低です。
去年1年間で死亡した人の数は156万8961人となり過去最多です。亡くなった人から生まれた子どもの数を差し引いた人口減少幅は79万8214人となり過去最大です。急激な人口減少社会になっていることがよくわかります。
年金制度の仕組みは「世代間扶養」です。1960年(昭和35年)では現役世代11.2人で一人の高齢者を支えていたのに、2015年(平成27年)では、2.3人で一人、2050年では1.3人で一人の高齢者を支えなければなりません。
当然、年金の受給額も減るでしょう。厚生労働省による「モデル世帯」の夫婦の年金額は2019年(令和元年)で約22万円/月です。それが、2043年には約18万円/月になると予想されています。昭和61年3月までの旧法時代の人たちは約28万円/月もらえていたことを考えると、年金制度がどんどん頼りなくなってきていることがよく分かります。