マイナンバーカードをめぐるトラブルなどで岸田内閣の支持率は下落しており、今秋に再び“解散風”が吹く可能性も取り沙汰されている。しかし、今の野党は四分五裂しており、足並みは全くそろわない。自民党を脅かすにはほど遠い状況だ。はたして日本において「政党」とは何なのか。経営コンサルタントの大前研一氏が、日本の政党の問題点について指摘する。
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もともと欧米の政党は、産業革命後の工業化社会における資本家と労働者の対立が源流である。たとえば、イギリスは保守党と労働党、アメリカは共和党と民主党という二大政党制になっている。
ところが戦後の日本は、1955年の「保守合同」で誕生した自民党が長期政権を握る一党優位制だ。自民党は、国民が支持すると見た野党の政策をことごとく取り込み、手段を選ばずに政権を維持している鵺(ぬえ)のような政党である。政権を失わないことが最大の党是と言っても過言ではなく、本質は自由民主党ならぬ“政権維持党”であり“政策の総合百貨店”なのだ。
その象徴が、1993年の総選挙で自民党の衆議院議席数が過半数を割り込み、非自民8党派による連立政権が成立して下野した時だ。自民党はそれまで対立していた日本社会党と新党さきがけを抱き込んでわずか1年で政権を奪還し、あろうことか社会党左派の村山富市党首を「自社さ」連立政権の首相にした。
つまり、自民党という政党には改憲以外に一貫した政策もなければ、主義主張もないのである。
自民党は2009年の総選挙で大敗して再び下野したが、当時の民主党政権は「コンクリートから人へ」など七夕の短冊に書いた願い事のようなマニフェスト(政権公約)を実行できずに立ち往生した。そこに東日本大震災と福島第一原発事故が発生し、それへの対応・対策が極めてお粗末だったため、民主党政権は2012年の総選挙で惨敗して自民党が政権に返り咲いた。
その後は野党が四分五裂し、1つにまとまって自民党を脅かすという状況にはほど遠い。本来、サラリーマンをはじめとする「サイレント・マジョリティ」の利益を守るべき「連合(日本労働組合総連合会)」も、芳野友子会長が自民党にすり寄っている上、傘下の産業別労働組合によって支持政党が分かれる“股裂き”状態になっているので、立憲民主党と国民民主党に候補一本化を要請するだけという体たらくだ。