作品のモデルや舞台になった場所に訪れる“聖地巡礼”。ファンにとって特別な場所に、国内はもちろん海外からも多くのファンが足を運び、地域活性化を期待する声も多い。一方で当の「聖地」の側では、押し寄せるファンがゴミを散乱させる、交通マナーを守らないなど、新たな問題も生じているようだ。“聖地”の地元住民たちに、その実態を聞いた。
踏切で毒づかれて唖然
人気漫画『スラムダンク』にゆかりのある神奈川県鎌倉市。江ノ島電鉄の鎌倉高校前駅近くの踏切はアニメのオープニングにも登場し、聖地として長く愛されてきた。その近隣に長く住む50代女性・Aさん(メーカー勤務)は、混雑で生活に支障が出ていることを嘆く。
「コロナ前から日本人だけでなく、アジア系の外国人もたくさん来るようになっていましたよ。天気が悪い日でも朝から何組かいるぐらいの人気。コスプレをしている人も結構いて、なかにはウエディングドレスを着て撮影していた人もいたと聞いています。コロナ禍で一瞬静かになったのですが、最近は映画のヒットとともに渡航制限がなくなって、再び多くのファンが押し寄せています」(Aさん)
そんなAさんは、「訪れる人たちのなかには、一部マナーがよくない人もいる」と嘆く。
「あの踏切周辺は、住民の車の往来も多いところ。観光客が線路内に侵入したり、道路のど真ん中で撮影したりしていて危ないと思ったことが何度もあります。単純に、交通の妨げになるのは生活するうえで迷惑なのですが、反対に『こんなところを車で通りやがって』と毒づかれたことがあって、びっくりというか、唖然としました。
聖地でなければ悩むこともなかったと思うと複雑な気持ちです。聖地巡礼を楽しむのはいいのですが、そこにはリアルに人が住んでいるということも理解してほしいです」(Aさん)