両親に心配されて「部屋に塩をまかれた」
IT企業に勤務する40代女性・Bさんも、事故物件で暮らしていた時期がある。妻の留守中に夫が幼い子供と心中したという1LDKの物件だった。
「結婚当初、夫婦で住んでいました。当時マイホーム購入のために節約していた時期で、安さに惹かれたんです。1LDKで他の部屋は12万円くらいなのに、その部屋は2割ほど安いイメージ。きちんと事故物件という説明もあり、納得したうえで住みました。内見時は人が死んだ場所という先入観からめちゃくちゃ怖かったことを覚えていますが、住んでみると何もありませんでした」(Bさん)
そんなBさんは、何気なく両親に家賃の話をしたとき、「事故物件」であることにも触れた。すると親の顔色が急変したそうだ。
「両親にやたら心配されるようになりました。『あんたまで霊に引き寄せられて死ぬかもしれない』とか言って、お祓いを勧められたり、親が家に来たときは、塩を部屋中にばらまかれたり……。私たち夫婦は何も聞く耳を持たず、またどちらも霊感はないようで、2人とも平常運転でした」(Bさん)
商店街の人から「あそこに住んで大丈夫?」
20代女性・Cさんは、家賃相場よりも2万円ほど安い部屋を見つけた。過去に殺人事件があったマンションだが、現場となった部屋ではなかったため、契約することにした。
「過去に同じマンションで事件が起こっていても、ほかの部屋ならあまり気になりません。しかもそのマンションは戸数も多く、全部で100戸ぐらいある。もはやどの部屋かわからないレベルです。
ただ入居後、引っ越してきたことを地元の商店街なんかで話題にすると、『あそこは殺人があったでしょう。大丈夫?』と謎の心配をされることがしょっちゅうでした。お墓の近くの物件を嫌がる人がいると言いますが、それと同じ感覚で心配されてるんでしょうね」(Cさん)
事故物件は家賃も安く、物件の住み心地自体には満足できたとしても、「周囲の人たちの反応が予想外に面倒だった」という声は案外少なくないようだ。(了)